連載小説

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第十一話再会
「こんばんわー」私が開けた扉の向こうには、妙に明るく挨拶をする一人の女性が立っていた。 小柄で華奢なその女性は、年の頃は私と同じか少し下であろうか? 慣れた感じで私を部屋の奥まで押し込むように入室すると、「暑いよー」と言いながらエアコンのスイッチを入れた。 私は久しぶりに味わう雰囲気を楽しんでいた。(やはり私は根っから風俗が好きなのだろう) そんな事を考える余裕が出てきた頃、私は彼女に一つ質問をした。 「広告の夏の大三角形ってどういう意味?」彼女は急に恥ずかしそうな表情になって言った。 「気になる?」私が小さく頷くと、彼女は「シャワーに入ろうか?」と、私の手を引いた。 彼女に手を引かれた瞬間、私は何か特別な懐かしい感覚を覚えた。いや、彼女を見た瞬間から感じていた懐かしさに気付いた。 そんな私を気にも止めず、彼女は早くも洋服を脱ぎ出している。 久しぶりの風俗どころか、生身の女性に触れることすら久方ぶりの私の興奮も、既に絶頂に達している。 彼女に従うままに、私もゆっくりと服を脱ぎ出した。お互いが全裸になり、シャワー室で向き合った時に、私は彼女の胸にある三つのほくろに気付いた。 その三つのほくろは、彼女の乳首を囲むように大きな三角形を描いている。 (何だろう?この懐かしい感じは…)彼女は私を見上げながら一言「気付いた?」と、聞いた。 今思えば、彼女は「夏の大三角形」について聞いたのであろう。しかし私は、その質問で気付いてはいけないことに気付いてしまった。 そう、彼女は私がまだ中学生だった頃に付き合っていた、初恋の彼女だったのだ。 その衝撃的な事実と、妙な懐かしさが一つに繋がった瞬間、私の膨れ上がっていた股間の血液は逆流し、一瞬で顔面へと移行した。 その異変を感じた彼女は、激しく動かしていた手を止め立ち上がった。 「どうしたの?」まるで恋人のように私に問いかける彼女に対して、複雑な気持ちを感じつつ、私は迷いながらも打ち明けることにした。 私は一言だけ自分の名前を言った。彼女も一言で気付いたのであろう。何とも言えない表情を浮かべて、私の名前をくり返した。 お互いが微妙な間を感じつつ、無言の時が流れた。私はそそくさとシャワー室から上がり洋服を身に付けた。 私の後を追うようにシャワー室から出てきた彼女は、再び私の名前を呼んだ。 妙に身構えている私に対して彼女は優しく懐かしい微笑みを浮かべた。彼女の笑顔を見た私は、一気に気持ちが楽になるのを感じた。 (彼女も大人になったんだ)私は心の中で彼女のこれまでの人生を想像しながら、静かにベッドに腰を下ろした。 彼女もゆっくりと私の隣に腰を下ろして、懐かしそうに私を見ている。時折お互いに恥ずかしそうに見つめ合っては笑ってしまう。 そんな瞬間、私たちはあの頃の楽しかった二人に戻れたような気になれた。ふいに彼女が言った。 「なんで連絡してくれなかったの?」私はその言葉に耳を疑った。私も彼女との別れを、彼女と同じ気持ちで考えていたからだ。 お互いが相手の連絡を待つが故にすれ違ってしまう。時として男女はそのような別れを繰り返す。 私たちはお互いに感慨深げにあの頃のことを思い出した。しかし、お互いが気付いている。(あの頃には戻れない) 彼女は遠慮深げに鳴り出したタイマーを手に取り、「そろそろ時間ね」そう言った。 私は小さく頷き立ち上がった。部屋を後にしようとする私の背中に向かって彼女が一言だけ言った。 「がんばって」今日一番明るい声である。私はその言葉に(私も頑張るから)彼女のそんなメッセージを感じた。 (今日、再び出会えて良かった)私は熱くなった目頭を強く瞑り、振り返らずに部屋を後にした。

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